Firefox Developers Conference 2008 Report 「Mozilla Labs etc... -新しいユーザエクスペリエンス-」 〜経験を再現させる技術が Web の進化をうながす〜

ブラウザの変化に伴う新しいユーザエクスペリエンスをテーマに、慶応大学 SFC でユーザインタフェイスや Web インタラクションなど多岐にわたる研究を行なっている筧康明先生からは、『実世界とつながるブラウザ』をテーマにした次の研究についての話を。Mozilla Labs の Daniel Mills には、ブラウザとオンラインサービスの統合により豊かなユーザエクスペリエンスを実現する Weave についてご講演いただきました。

「実世界とつながるブラウザ -灯の次の展開-」

筧 康明 氏 (慶應義塾大学 環境情報学部)

人の行動や感覚をインタフェイスに反映する

慶應義塾大学の筧康明氏は、ユーザインタフェイスや Web インタラクションなどの研究をしており、それをきっかけに今年から Mozilla と共同研究も行なうようになりました。そこでキーワードにされているのが、実世界と情報社会をつなぐインタフェイスであり、ご自身でもすでにいくつかの研究発表を行われています。

たとえば、コミュニケーションの場として、さらに時空間インタフェイスとして、人と人やさらにその先を結ぶものを研究されており、実際にコミュニケーションツールを開発したり作品として発表されています。

作品としては、地図の上を歩くと昔の地図が表示されたり、動物の足あとが付いたり、すれ違うとアニメーションが表示され、偶然の動きが何か生み出し、それをきっかけに空間に入り込めるようにするといったものや、どこからも見られるディスプレイで、なおかつ使う人に合わせて提供する情報が異なる、といったものがあります。実験的なインタフェイス作品としては、ただの板がある時はマウス、ある時はジョイスティックのように働くようにするという「ForceTile」といったものも発表されています。

Web と関わりのあるものでは、Mozilla との共同研究成果でもある「Firefox の灯」があります。Firefox がダウンロードされる状況を視覚化したもので、Firefox 3 リリースパーティー会場で紹介された「灯プロジェクト × Firefox 3」はさらに音や視覚効果を加えられ、ユーザがタッチディスプレイで画面を操作して演出ができるというゆるやかなインタラクションを実現されています。

実用化で課題になるのは技術力よりも使われ方

人と時空間をつなぐ技術はすでにいろいろ登場していますが、「ブラウザがその媒介として機能するのではないか」と筧氏は言います。時間と場所によらず同じ情報を見られるのが Web の特長ですが、逆にブラウザを使う時間と場所で情報をコントロールすることによって、人と実世界が感覚的につながるかもしれないとも考えています。そのひとつの例として、アクセスした時の場所や情報によって、ブラウザのフレームに表示される写真が変わるツール「siteskin」という作品も作られています。

すでにブラウザは個人情報や状況を分析して情報を提供する機能があり、将来的には検索する前にブラウザが先読みして情報を提供するようなこともできるようになるでしょう。しかし、そうなると一方では、自分自身の情報をどこまでコンピュータに蓄積するかというプライバシーやセキュリティの問題も生じます。技術的には可能であっても、メンタリティの問題で実用化が難しいという状況も出てくるでしょう。

「これからの情報をデザインしていく上で大切なのは、便利さよりも人間中心であることを考慮することです。それがどういうものになるかを具体的にカタチにしていくのが私たち研究に携わる人間の仕事である考えています」

「Weave+Fennec: Continuity of Experience」

Daniel Mills (Mozilla Labs)

ユーザ経験の共有を可能にする Weave プロジェクト

Daniel Mills からは、Mozilla Labs のプロジェクトのひとつである Weave が紹介されました。Weave とはデスクトップに蓄積されたのと同じ情報をモバイルでも共有することを課題に始まったプロジェクトで、具体的には、デスクトップで見た最後のタブをケータイと共有したり、そのページを知人と共有できるようにすることを目指しています。このようにユーザが経験したことを場所やデバイスに関わらず再現できることを、Labs では「エクスペリエンスの継続性」と呼んでいます。

プロジェクトではクラウドがポイントになると考えられており、より多くのメタデータをリンクしていくことで、共有が容易になるとしています。ここで大事なのはセキュリティで、サーバにデータが送信されるまでに 2 回暗号化しています。SSL によって暗号化していますし、送信データ自体も暗号化しています。その上で公開鍵を使って共有を可能にしますが、もちろん共有設定も利用者がコントロールできるようにしています。共有できる相手も様々で、Weave を通じて携帯電話と Firefox、さらに Thunderbird と情報を共有するといったことも可能になります。

おもしろい共有の使い方の例としては、アメリカで人気の del.icio.us (ソーシャルブックマーク) といったサービスを通じて、同じような趣味の人達とコミュニティしたり、ネット上に何かおもしろい動きがあった時にすぐに人に伝えられるようになるといったことがあります。

Weave リリースの次期について Mills は来年の四半期に Fennec と一緒に提供することを予定していると言い、「最初はまだ共有設定はできませんが、計画には柔軟な設定ができるよう開発を進めている」ということ。また、Open Web という発想で、情報を公開しながらどのようなコントロール方法を採用するのがいいのか考えていくということです。

Weave は個人でサーバを運営することもできるし、すでにそうした動きもあります。ただし、大量のデータ共有が予想されるので、サーバの管理や連携の方法もまだ考慮する必要があるようです。「Mozilla の中核にある信念のひとつとして、誰もが自分のサーバを立ち上げられるようにするというのがあり、今後のサーバ間の協調を考えることは、我々にとって大きな課題のひとつになっています」

機能の便利さに加えて安全性を考慮する

Mozilla Labs では他にもいくつかプロジェクトが進行しており、その中のひとつ、Personas というプロジェクトでは、筧氏の話に登場した時間と場所でブラウザの表情を変えられるような研究をしています。今でも Firefox はテーマを使ってデザインを自由に替えられますが、テーマを探してダウンロードしたり、設定するには再起動するといった手間がかかります。そこで、クイックスキニングという発想を採用し、再起動しなくても気軽にブラウザのデザインを替えられるようにしています。

これは「Streamable Browser」とでもいう、様々な機能を動的に変更できるブラウザに向けての最初の実験でもあります。使用している環境に合わせてデザインを変更する、つまり、履歴にあわせて見た目を変えたり、IP を参照してユーザがアクセスしている地域の地図やウェブカムの映像を使って 1 時間ごとに更新したりもできます。同じような機能を果たす人気のアドオンを参考に採用されたということです。

「プロジェクトを進めるにあたってはユーザの安全性を考慮している」と Mills は言います。「たとえば、アドオンをインストールなしで使えるようにするといったことは可能ですし、便利にも思えますが、ユーザの承認を省略するのは最終的によい結果にはならないと考えています。プロジェクトではトータルな完成度を高めたものを発表するようにしており、そのためにも今後も多くのコミュニティの支援をよろしくお願いします」

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  • 動画の公開期間は 3 ヶ月間となります。(2009 年 4 月 28 日まで)
  • 動画配信は WIDE University, School of Internet (SOI) 様のご協力をいただいております。
  • 動画を見るには RealPlayer Basic (G2 以上) または RealOne Player が必要です。(詳細)

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